フェルミ推定(市場規模の推定方法)
フェルミ推定とは、統計データがない、あるいは実際に調査を行うのが難しいようなことの量を、いくつかの手掛かりを元に論理的に推論し、短時間で概算することをいいます。
フェルミ推定という言い方は、物理学者のエンリコ・フェルミ(シカゴ大学)に由来しています。フェルミはこの手の概算を得意としていました。
フェルミ推定で特に知られているのは、「アメリカのシカゴは何人のピアノ調律師がいるか?」を推定するものです。これはフェルミ自身がシカゴ大学の学生に実際に出題したと言われています。(この解答例はウィキペディアに載っています)
以下に、フェルミ推定の基本手順を解説します。
■フェルミ推定(市場規模)の基本手順
ステップ1.試算の精緻レベルを判断する
与えられた時間や必要性によって、どのレベルで試算するかを判断します。「初期試算」以上であれば、市場レポート等の調査資料を入手して数字を集める必要があります。
経営判断に関わるレベルになると、適当に拾った数字ではなく、信頼できる出典が求められるからです。
ステップ2.市場の要素を因数分解する
ケーススタディとして、「化粧品のネット販売の市場規模」を考えてみましょう。
☆化粧品ネット市場の構成要素
基礎 化粧品の単価×1人あたりの購入数×買い替え頻度×人数
(+)
メイク 化粧品の単価×1人あたりの購入数×買い替え頻度×人数
×ネット化率=化粧品ネット市場
ステップ3.要素の数値を式にあてはめ、暫定的に概算値を求める
化粧品の単価基礎4,000円メイク2,000円 | 周囲の女性5人にヒアリングを行った。その結果から平均をとって設定。 |
1人あたりの購入数基礎3個メイク6個 | ヒアリングの結果、ポーチの中にメイク道具を6~7個、家では基礎を3~4種類常備していることが判明。 |
買い替え頻度基礎3回メイク4回 | 女性は3~4ヶ月くらいで化粧品を買い替えていると聞いて設定。単価の高い基礎は買い替え頻度を低めに設定。 |
人数4,200万人 | 18~70歳までの人が化粧品を日常的に使うと仮定。おそらく女性全体(6000万人)の70%程度として設定。 |
ネット化率5% | 周りでネット購入している人はいなかったが、BtoCのEコマース平均の5%で設定。 |
要素の数値を式にあてはめると、
基礎 化粧品の単価×1人あたりの購入数×買い替え頻度×人数
4,000円×3個×3回×4,200万人
(+)
メイク 化粧品の単価×1人あたりの購入数×買い替え頻度×人数
2,000円×6個×4回×4,200万人
=1,800億円
暫定的に求めた概算値は、約1,800億円、となります。