「インナーワーク」と「コーチング」 – マネージメントオフィス桜田
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「インナーワーク」と「コーチング」

チクセントミハイが「フロー」の研究を始めたころ、それとは別に、ティモシー・ガルウェイというひとりのテニス・コーチが、きわめてよく似た現象を発見しています。

彼の主張が典型的に表れている場面の1つが、生徒の欠点をコーチが指摘し、矯正しようとするときのことです。欠点を指摘された生徒がそのことを意識すると動作がぎこちなくなり、矯正どころか、前にはできていたことさえもできなくなってしまうこともあります。(小生のゴルフも、このパターンを繰り返しています)

同じ現象は試合中にも頻繁に起こります。何かひとつのことが気になりだすと、集中できなくなり、プレーが乱れます。

ガルウェイは、この現象がなぜ起きるのかを考えました。そして、実際にコートの上で相手と戦っている「アウターゲーム」のほかに、選手が自分の心の中で戦っている「インナーゲーム」が存在すると考え、「インナーゲームをいかに戦うか」の探求が彼のライフワークになりました。

ガルウェイは、反省や指示をしている自分自身を「セルフ1」(第1の脳)、それを聞いて実際にプレーをしている自分を「セルフ2」(第2の脳)と呼んでいます。

セルフ1」(第1の脳)が発している反省や指示をよく調べてみると、日常的にコーチが選手に発している内容とまったく同じでした。つまり、「セルフ1」(第1の脳)というのは、選手が自らの内側に作り出した「コーチの代役」だったのです。

ガルウェイは、ほとんどの場合、「セルフ1」(第1の脳)が優位なときにはいいプレーができていない、逆に、最高のプレーができたときは「セルフ1」(第1の脳)が黙っており、選手は「無心」になっていることに気づきます。

このことからガルウェイは、従来のコーチの指導方法は、選手の心の中に言語で表現された「雑音」(反省や指示)を作り出し、選手が「無心」になることを妨げているとし、まったく新しい指導法を考案しました。

ガルウェイの方法論のベースは、「人間の本質であるセルフ2(第2の脳)は、はじめから何の問題もなく、ものごとをすばやく習得して正しく実行する力を持っている。その真実を理解し、セルフ2(第2の脳)を全面的に信頼することができれば、すべてがうまくいく」という考え方にあります。

ガルウェイは次のように言っています。

 セルフ2が集中しはじめると、まるで魔法のようなことが起きる。体が何の努力もなしに自分から動き始め、自我意識がどこかに消えてしまう。自己評価もない。不安や不信からくる過剰コントロールもない。この種の集中が起きているときは、心配や退屈も感じない。言葉で説明するのは難しいが、心はシンプルな状態で、奥底の歓びを感じ、平凡な単純作業の最中でも純粋な驚きや想像を体験することがある。快く落ち着けるリズムが生まれ、急速に仕事が進むのもこういう状態の時だ。

いかがですか。これは、チクセントミハイの「フロー」とまったく同じですよね。

ガルウェイが主張した「インナーゲーム」の考え方は「インナーワーク」として企業経営に応用され、「コーチング」のルーツになっています。

2015/09/17