U理論(オットー・シャーマー)
今回は小生が今もっとも関心を寄せている「U理論」についてご紹介させていただきます。
「U理論」とは、MIT(マサチューセッツ工科大学)のオットー・シャーマー博士によって提唱された理論です。
この理論が特徴的なのは、優れたリーダーの「やり方」に着目するのではなく、ブラックボックスになっている彼らの「内面のあり方」、すなわち高度なパフォーマンスや変革か起こる際の「意識の変容」に着目している点です。
シャーマー博士は、世界の様々な領域に渡る最も著名なリーダー(150人)へのインタビューや、イノベーターたちとの仕事を通じた経験をベースに、個人や組織がどんなプロセスで新たな未来を創造し、現実化させたのかを体系化し、理論化しました。
Uプロセスの7つのリーダーシップ能力
Uプロセスには、大きくは以下の3段階があります。
■Uを下る:自分の境界線の外側の世界とつながる
■Uの谷:自分の内側から現れる世界(源)とつながる
■Uを上る:新たなものを世界にもたらす
これだけではやや抽象的ですので、もう一段具体化したものが以下の7つのステップになります。(一部アレンジしています)
1.ダウンローディング(Downloading)
過去の経験によって培われた枠組みを再現する(聞く力)
ホールディング(Holding)
他者を聴く、自分自身を聴く そして集団から現れるものを聴く(聴く力)
(聴く場をホールドする力は、誰もが全体性に貢献できる開かれた場を創るために欠かせません)
2.スィーイング(Seeing)
頭の中の推定から真に観察することに移行する上で評価判断の声(Voice of judgment)を保留する能力は必須です(保留する力)
判断を保留し、現実を新鮮な眼で観る(観る力)
3.センシング(Sensing)
Uの左側を下りるには「思考」、「感情」、「意志」を開き、その抵抗に対処することが求められます( 手放す力)
この開いていくプロセスは集団としての能動的な「感じ取る(sensing)」という行為から起こります(感じ取る力)
「開かれた心」によって全体性から置かれた状況を見ることができるようになり、「開かれた意志」によって出現する全体性から行動することができるようになります
4.プレゼンシング(Presensing) ※(PresenceとSensingの造語)
「自身の最も深い源につながる能力」によって未来はある部分的な関心からではなく全体性から現れるようになります
5.クリスタライジング(Crystalyzing)
小さなグループがプロジェクトの目的と結果にコミットするとき、意図の力が人、機会、リソースをひきつける「エネルギーの磁場」を生み出し、「それが現実をつくっていきます」(ビジョンや意図を明確化する力)
コアグループは、全体性が宿る器として機能するのです( 結晶化する力)
6.プロトタイピング(Prototyping)
Uの右側を上るときは「思考」、「感情」、「意志」を「統合する力」が求められます
さらに、実践と学習によって「未来を探索する」ことも必要となります(ビジョンを構築する力)
ビジョンに沿って具体的なものを作ったり、関係者からのフィードバックを得ます
7.パフォーミング(Performing)
テーマとなっている現実的課題に関係する現場の適切な人たち(ステークホルダー)を巻き込み、エンパワーします(実践する力)
U理論は哲学、心理学、認知科学などの幅広い知見を取り入れており、非常に学際的なため、やや難解ではありますが、ポイントは、「プレゼンシングの能力がどのように開かれるか」を示している点にあると思います。
全体的に奥が深い理論ですが、実務的にも非常に応用範囲の広い理論であり、研究に値すると思っています。